ちょっと笑える小話集―スタイル抜群のブラジル人

 

僕は少し前に自分の会社の従業員としてブラジル人男性を雇っていた。

 

彼は日本語も上手で気さくな人間だった。

 

僕は彼と良好な信頼関係を築けていた。

 

ある時、彼は不注意で財布を落としてしまった。

 

実は外国人が財布を落とすと大変なのだ。

 

在留カードを再申請しなければならず、免許証やその他の公的証明物は在留カードが発行されないと再発行できないのだ。

 

つまり彼は暫くの間仕事でも運転出来ないことになる。

 

責任を感じた彼は仕事に彼の奥さんを運転手として同伴する事を許可して欲しいと申し出てきた。 もちろん奥さんの給料は出ない条件でだ。

 

僕は奥さんの負担が大きくなるかもしれないのでとりあえず2~3日そのスタイルで試してから再検討しようと提案した。

 

次の日、二人は彼の奥さんの運転で出社してきた。 奥さんはまだ20歳ちょっとのスタイル抜群のブラジル人だった。

 

その日は僕の朝の予定がビッシリ詰まっていたので簡単に挨拶を済ませて、とりあえず僕の車のあとをついてくるように二人に指示をして僕は自分のクルマに乗り込んだ。

 

僕は急いでいたので高速にのり、彼等のクルマがついてきているのを時々確認しながら彼女の事を考えていた。

 

彼女は日本語はカタコトだが、何とか会話が出来そうなレベルだ。

 

そして何と言ってもスタイルが抜群なのだ。リオのカーニバルに出てきそうなスタイルだった。

 

目的地についた僕は今日の彼等の仕事内容を伝える為に彼等のクルマへと歩いた。

 

ブラジル人の彼はトイレに行きたいと言い、その場を離れた。

 

僕はしばらくスタイル抜群の若い奥さんと二人きりになった。

 

僕はできるかぎり彼女の体を見ないようにしていた。

 

そんなとき、彼女が僕にこう言った。

 

「ワタシ、エッチシナイヨ」

 

「え?」 僕は思わず聞き返した。

 

「ワタシ、エッチシナイヨ」

 

バイ。 気を付けていたつもりだったがスケベな目になっていたのだろうか。 僕はどうリアクションしたらいいかも分からない。

 

「ダカラ、ワタシ、エッチシナイヨ」

 

彼女は何度も繰り返してくる。 僕は精神的に追い込まれて汗だくになっていた。

 

「ダカラ、ワタシ、エッチシナイヨ!」

 

彼女がとうとう大声でさけんだ時、彼がトイレから帰ってきた。 彼女は「僕にイヤらしい目で見られた」と彼に報告するハズだ。 僕と彼の良好な信頼関係もこれで終わりだと思った。

 

 彼「ゴメンナサーイ、ワタシのクルマ、トテモ、古イデス。 ETCツイテマセーン」

 

「へ?」

 

「私、ETCないよ」だったのね…。