ちょっと笑える小話集-重要伝達事項

僕が就職した当時はまだ企業がホームページを持つことが当たり前ではなく、大企業がホームページを立ち上げ始めている頃だった。

 

僕は大学でインターネットを使っての調査というものを授業でおこなっていたがほとんどの社会人はインターネットを使った事はあってもあまり詳しくはない時代だったのだ。

 

ある日、新製品の発表があるということで営業所の副所長だった僕は管理者の集まる会議に召集された。

 

会議は社長以下お偉いさんクラスがズラリと出席していてテレビなんかでよくやっている大企業の会議(円形に20~30人が内側を向いて座るやつ)だ。

 

下っ端の僕は円の中に席などなく、壁際に立っての参加となった。

 

なんとも言えない緊張感の中、開発部署からの新製品の説明があった。

 

説明のあと普段はあまり発言しない社長が開発担当者に小言を言い始めた。

 

「君は何を説明するのかきっちり自分で分かっているのか? 君がしっかり理解できていないと他の人に伝わるはずがないだろう。 これだけの人数が時間を調整して会議をやってるんだ。 もっとしっかりやってもらわなくては困るよ!」

 

社長の小言で会議はさらにピリピリしたものになった。

 

社長「他に誰か何かあるか?」

 

「……」

 

 

この空気で誰も発言できるはずがない。

 

社長「よし、では私から。 

今から言うことは重要伝達事項だ。

みんな各部署に帰ったら忘れずに全員に伝えるように。」

 

社長の一言で全員がメモを取る態勢になった。

 

「今回新たな広告媒体としてこの商品のホームページをホームページ製作会社に依頼して作成した。

アドレスは●●●●●●.●●だ。

これからはインターネットの時代になる。

みんなも時代に取り残されないようにして欲しい。

良い機会だと思って積極的に『あくせく』するように。」

 

 

全員が社長の言葉を一言一句漏らさぬように必死にメモをとっていた。